外国人依存を強める茨城県の農業

外国人労働力がなければ農業経営が成り立たない

 まずは、2005年の国勢調査の結果にもとづいて作成された年齢別農業雇用者数を示した下の表に注目を。*1

《全国の年齢別農業雇用者数》

  総数 15〜19歳 20〜29歳 30〜39歳 40〜49歳 50〜59歳
雇用者数 304,744 3,745 40,069 46,335 54,831 79,257
うち外国人 7,559 303 4,074 1,905 777 356
外国人の割合 2.5% 8.1% 10.2% 4.1% 1.4% 0.4%


茨城県の年齢別農業雇用者数》

   総数  15〜19歳 20〜29歳 30〜39歳 40〜49歳 50〜59歳
雇用者数 10,974  129 2,246 1,727 1,727 2,705
うち外国人 1,898  24 1,180 484 139 57
外国人の割合 17.3% 18.6% 52.5% 28.0% 8.0% 2.1%


 全国平均と比べて、茨城県の外国人雇用者数の割合は非常に大きい。実は、茨城県は全国で最も外国人農業雇用者が突出して多い県なのだという。(2位は長野県で5.9%)
 特に、赤字で示したように20代の雇用者の過半数を外国人労働力に依存していて、茨城県の畑作・施設園芸地帯では「外国人労働力がなければ、農業経営が成り立たない」という情況にまでなっている、らしい。

農地の大規模化が外国人依存の原因

 茨城県の農業が外国人依存を強めたのは何故なのか?『農村と都市をむすぶ』2009年1月号に掲載されている数種類の調査結果を総合してみると、その背景には“雇用者の高齢化”“経営の大規模化”があるようだ。
 「高齢者は、力仕事に向いていない」、「年金受給者のため、個人の事情で欠勤することも多く、作業スケジュールが立てられない」、「冠婚葬祭で休んだり、体がきつくなるとすぐ休んだりと、あてにならない」などなど、経営規模の拡大を図る農業経営者の多くが雇用者の高齢化に頭を悩ませていて、「勤労態度がまじめな」外国人研修生に注目したのだという。その数は、徐々に高齢者雇用を駆逐し茨城県内の農業雇用者の基幹労働力になりつつあるらしい。また、外国人労働力の導入によって経営の複合化が進んでいるとも指摘されている。

 県内の農協でも聞き取り調査を行ったが、従来からの雇用者(周辺の元農家の世帯員)が高齢化するなかで、外国人研修生を受け入れる農家がここ数年で急増していた。農協では、外国人研修生を受入れできる基準として農産物売上高3000万円以上と考えており、この基準をクリアできる農家の多くはすでに外国人研修生を受け入れているようである。このため、外国人研修生、技能実習生を受け入れる農家数は余り増えないが、一戸当たりの受入人数は増加傾向にあり、当分の間、受入人数は増加するとみている。また、外国人研修生、技能実習生の受入農家では、外国人研修生を周年就労させるため、農閑期の夏場にネギを導入したり、施設野菜を導入したりする事例が多く見られる。
『農村と都市をむすぶ』2009年1月号 p.37-38

 雇用労働力の必要な大規模経営で、従来からの日本人の労働力が減少するとともに安定的確保の面から問題が生じており、より安定的な労働力を求めた結果として(外国人研修生・技能実習生は)増えてきているのである。
(中略)
 茨城県での聞き取り調査によると、すでに外国人研修生、技能実習生がいないと規模が維持できない農家が多くなっている。この状況を安藤光義氏は、「外国人研修生・技能実習生の導入は地域のスタンダードとなっており、“退くに退けない”状況に農家は追い込まれているのである」と述べている。
『同上』 p.38

ニッポンの農業の未来

 茨城県のような外国人依存が全国的に波及する可能性はあるのだろうか?
 農業をビジネスとして捉え、大規模化こそが日本農業の生き残り策とする考え方が強まっている昨今、そして農業人口の高齢化が進む一方だということを考えると、その可能性は大いにあると言わざるを得ない。
 また、外国人依存だけでなく、農業雇用者の数がますます増加することも予想される。事実、2005年の国勢調査によると、1990年以来15年で農業雇用者は10万人も増え、農業就業者全体に占める割合も1990年の約5%から2005年には1割を超えるまでになっている。
 農業人口の減少と一口に言われているが、その実態をみると、正確には“自作農”が減少する一方、“小作人(農業雇用者)”は増加していると言うべきではないだろうか。
 こうした傾向も、ニッポンの農業を強くするためには“仕方がない”ことなのだろうか?

*1:松久勉『農業分野の外国人研修生、技能実習生の実態』 「農村と都市を結ぶ」2009年1月号参照