慕われた「麻薬王」

朝日新聞09/03/04

タイ北部、少数民族の村の広場に約1年前、乗馬姿の男の彫像が立った。軍服で腰に短銃。タイとミャンマーにまたがる「黄金の三角地帯」を30年以上支配し、米国が懸賞金をかけて追った「麻薬王」クンサーの像だ。
(タートタイ村〈タイ北部〉=柴田直治)


チェンライの北西65㌔。ミャンマー国境に近いタートタイ村にはシャン族を中心に約4000人の村人が住む。
クンサーは1976年から、タイ軍に敗れてミャンマー東部のシャン州に本拠を移した1982年まで、この村を拠点にアヘンの取引を仕切っていたとされる。


2007年10月末、クンサーが死亡した一週間後、村人たちは葬儀を催した。香典の一部20万バーツ(約54万円)で彫像を二つ造り、もう一つはクンサーの旧邸に置いた。旧邸では89年以来、クンサーのベッドや衣服、写真などを展示。村人らが運営する。


クンサー時代に子供らにシャン族の歴史や言葉を教えていたクルドゥエンさん(50)によると、クンサーは村に病院や道路、学校などを整備する一方、村人や兵士には麻薬の使用を禁じて規律を守り、村人から慕われていたという。「村人には優しき、部下の使い方がうまかった」。ここではシャン族の独立をめざした「自由の戦士」なのだ。


米国政府は200万ドルのは懸賞金をかけていたとされる。96年にミャンマー政府に投降後もヤンゴンで不動産業などを営んでいたといわれる。

クンサーは、シャン族の独立を勝ち取るために、資金源として麻薬取引を牛耳っていたのか?
アメリカが躍起になって彼を追いかけた真の理由はなんなのか?
中国、台湾、ベトナム、タイ、ビルマ、そしてアメリカ。
かつて、各国の思惑が複雑に絡み合った「黄金の三角地帯」の現状は、どうなっているのか?
クンサーを英雄として捉え直す、感傷に満ちた記事も面白いが、現状についてもっと知りたいと感じた。

クンサー参考文献

クンサー―この麻薬王と知ってはならない黒い世界

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