思考するには「良い問」を発することが肝要
- 作者: 丸谷才一
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/10/10
- メディア: 文庫
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丸谷才一の文体のせいか、対談のせいか、本文の内容は退屈。
本書のエッセンスを把握するだけだったら、鹿島茂が書いている巻末の解説を読めば充分。
ただし、〈思考のルールブック〉と題されたその解説の内容も、鹿島が書いている『勝つための論文の書き方』(文春新書)のエッセンスでもあるのだけれど・・・。
思考するためのルールとは・・・
- 「比較と分析」をする
- 「差異と類似」に注意する
- 「見立て」*1を行なう
- 「良い問」を立てる
- 「自分の発する謎」であることが“良い問”の第一条件
- 「謎を上手に育てる」ことが第二の条件
- 「常に謎を心に銘記」することで、問いを深める
- 「仮説を立てる」という冒険をする
ちなみに、「良い問」を立てるためのより具体的な方法論については、刈谷剛彦『知的複眼思考法』が参考になる。
知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)
- 作者: 苅谷剛彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/05/20
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「答える」時代から「問いかける」時代へ
今や、世の中のかなり多くの人が「自分なりの“問い”を立てる」ことに関心をもちつつあるのではないだろうか?
一方で「正解をより早く、より正確に答える」ということへの関心は相対的に低下しているのではないか?
上で紹介した『思考のレッスン』の単行本発売は1999年。文庫化されたのは、2002年だ。実質的に今から10年も前の本なのに、文庫の売れ行きは好調だ。Amazonの和書ランキングで見ると、今日現在で2574位とかなり上位に位置している。
刈谷剛彦の『知的複眼思考法』も単行本発売は1996年、文庫化は2002年で、単行本の現在のAmazonランキングは、3278位だ。
「問いを立てる」こととは直接結びつかないものの、編集工学を提唱する松岡正剛の人気が非常に根強いのも、自分で小説を書きたがる人がかつてない規模で増えていることも、この潮流における一つの現象なのではないか。
なぜ、「問いかける」ことへの関心が高まっているのか?
- インターネットの進歩によって、自分の脳に知識を蓄えることの必要性が低下している。言い換えれば、人類はインターネットという外部脳(外付けハードディスク、もしくはフラッシュメモリー)を装着した。その結果、膨大な知識を整理・編集することの必要性が相対的に高まった。
- 価値観がますます流動化している。やはり、大きな要因としてはインターネットの進歩が考えられるが、新聞やテレビなどの権威が相対的に低下。その世論形成能力に疑問符が付けられ始めた。何かしらの権威に「答えを求める」のではなく、自分の頭を使って「答えを導く」ことの重要性に気が付く人々が増えてきている。
「早押しクイズ」的なテレビ番組に代わるコンテンツを
こうした世の中の潮流を考えると、「答える」番組、簡単に「答え」が見つかる番組は、もはや実質的には需要されなくなるのではないか。むしろ、いかにして「問い」を立てるかを競うクイズ番組のようなものこそ、多くの視聴者が求めているのではないか。
*1:『同種のものが別の外観で存在することを発見する、同類を見つけて同類項に入れる』p.216