第23回農業ジャーナリスト賞を受賞作

ムラは問う―激動するアジアの食と農

ムラは問う―激動するアジアの食と農

限界集落を守る定年帰農者』

 広島県安芸太田町・空谷でただ一人、山の手入れに打ち込む人がいる。広島市安佐北区から通う佐々木和治さん(70歳)。大手電機メーカーを10年前に定年退職した。折を見て無人の成果に戻り、畑や山仕事に精を出す。「自分や家族の根っこが、この山にある」
p.34

農水省耕作放棄地対策』

 年末年始(何年か不明)、東京都内の主要各駅に「田舎の農地、眠っていませんか?」とのポスターが貼り出された。仕掛けは農林水産省。農作業の委託や田の貸し付けを、都会の不在地主に呼びかけた。一方で、「借り手」となる集落営農をアピールする狙いも透けて見える。
p.53

アサヒビールが中国に農場を開設』

  • アサヒビールなど日本企業3社が2006年5月に『山東朝日緑源農業高新技術』を設立。
  • 中国の富裕層がターゲット。
  • 山東省莱陽市に約100haの巨大農場。
  • 看板商品はイチゴ。日本の“とよのか”、“女峰”などの特許切れの優良種を導入
  • 有機、減農薬栽培を実践。「日本で磨きぬいた味に安心・安全の付加価値を加えれば、必ず支持される」とアサヒビールで開発畑を歩んだ総経理の乾祐哉さん(41歳)は確信する。
  • 「美苺」と名付けたイチゴは1パック30元(約450円)。しかし、ジャスコ青島店では連日、完売が続く。
  • 『朝日緑源〜』の従業員は、日本人社員8人と中国人約50人。日本人のほとんどが青年海外協力隊などで途上国の農業支援に当たった経験あり。
  • 農場の狙いの一つは循環型農業の確立。近々、ニュージーランドから乳牛400頭を導入し、牛ふんを堆肥化して昔ながらの『耕畜連携』を復活させる。発酵したふんはハウスの熱源に利用し、環境にやさしい農業を実践する構想だ。
  • 農場設立のキッカケは、山東省がアサヒビールに農業近代化の支援を打診したこと。
  • 土地を借り受けた約600戸の農家には、パート雇用を受け皿として提案。
  • 目標は、5年後の単年度黒字化。

p.91-93