外山滋比古のノート術
- 作者: 外山滋比古
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/10/08
- メディア: 文庫
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素材、つまり、作品に即して感じた事柄と発酵素、すなわち、着想あるいはヒントが揃ったら、それをノートに記入しておく。このノートについては、あとでもふれるが、まず、右ページの上に仮の題目をつける。その下に、このページの記入を行なった年月日を入れる。“仕込み”の時期を明らかにするためである。その下に作品に即して得られた知見を整理して、箇条書きにする。書き切れなければ紙を貼って書く。左のページには発酵素に当るヒントを列記する。右左とも必要なら出典などを付しておくのはいうまでもない。新しいヒントや作品に即した知見があらわれれば、それもその都度記入する。ことに左のページはだんだん時のたつにつれて記載がふえていくのがのぞましい。
書きっぱなしにしないで、ときどき、このノートを開いてのぞいてやる。ついでにいえば、問題がひとつしかないというのは、前にものべたように、健康ではない。見つめる鍋はなかなか煮えないというように、あまり過保護になってはまずい。いくつか同時にモノになりそうな問題を仕込んでおいて、テーマの間で相互に競争させてやるのがいいようだ。十日か半月に一度くらいのぞいてやるのが適当であろう。
一ヵ月、三ヵ月、あるいは六ヵ月たった頃、急にこの記入が気がかりになってくるようになったら、いよいよ脈がある。一日に何度でもノートをのぞきたくなるかもしれない。そういうときに、ふっとまた新しい考えが湧いてくるものである。p.152-153
★いわゆる「知的生産法」というのは新奇なものはほとんどなく、どれも似通った内容なのだけれど、未だに続々と出版され、しかも売れているというのは一体どうしたことなんだろうか?